さてK大へと行きました。
『遺伝相談外来』
完全な予約なので時間きっちりです。回りには外来部屋が無く検査室ばかりなので、人も殆どいません。
ドアをノックすると、電話で対応してくれた看護師さんが出てきました。
電話での対応が、さすが遺伝子外来専門の看護師さん~といった感じだったので緊張しましたが。お会いするとイメージよりもやわらかい看護師さんで、やはりデリケートな問題であるので要所要所に心地よい気遣いが感じられました。
さて、2時に受け付けをして2時半から相談が始まりました。
メインのK先生ともう一方先生、そして先程の看護師さん3名とうちの家族とで向い合せに座りました。
質問をあれこれ受け、その後にいっちの診察が始まりました。
目、手、耳、足、お腹、背中・・・あれこれ。
集中しているのでしょう、先生も無口で少し緊張しました。
確認するように見ていたのですが、いっちの口をかなり先生は気にされていました。これはかなりの特徴だから・・みたいな事を小声で言っていました。
しばらく見てから、K病院からの紹介状を詳しく今から見ますのでという事で、しばらく外で待つ事に。
先入観を防ぐ為でしょうか、いっちを見てから照らし合わせるように紹介状の中のデータを見るのかな?って思われました。
『デランゲ』か『デランゲじゃ無い』か。
『近いけど確定できない』か、『かなり遠いから可能性は薄い』か。
どうだろう・・・親としては近いと思ったけど・・・先生も難しそうな顔してたし・・・
途中看護師さんが出てきて、『どんな事を一番知りたいか』とかそんな話をしてました。看護師さんとしても親の気持ちを聞き、先生にその答えを返して親の知りたいことに極力答えられるようにという配慮なんだと思います。
30分程して呼ばれました。
さあ・・・どちらか・・・
緊張して構えると、先程の診察に集中してちょっと近寄りがたい先生の表情とはまるで異なり、やわらかい表情の先生が口を開きました。
デランゲちゃんの特徴の中の一つで、それがいっちとは合わない部分がありますと。
それは『頭囲』です。
デランゲちゃんでは小頭症の子が多いらしく、大きな特徴の一つ、デランゲちゃんと決定する一つの要素となるらしいのです。しかし、いっちの頭囲は身長体重とは違い、年齢相当の頭の大きさなのです。3歳ぐらいの時には体に対して大きすぎたぐらいで。
確かに近い部分は多いけれど、きっとそうでは無いであろうとの事でした。
そして、
で無いけれど、そうでは無いかと思われる病気があるとの事。
そして、ティンカーベルのイラストが入った可愛いメモ帳に、先生が疾患名を書きました。
『コッフィン シリス症候群』
『Coffin Siris』
『コフィンシリス』と言われている事が多いようですが、要するにこの病気を発見した先生の名前です。
いっちが病気であるので、色々な症候群を知っているつもりだしお友達もいますが。初めて聞いた名前です。
先生の話では、非常に稀な症候群だそうです。
15年ぐらいこうした遺伝子専門で色々な患者さんに会っているけれど、今まで3名しか会った事が無いそうです。
デランゲちゃんが3万人~5万人に一人と言われていますが、コフィンシリスは100万人に一人程度と思われるそうです。サイトであれこれ探してみましたが、報告された人数は30人ぐらいだそうです。
しかし、症状の差も多くあるので、実はそうだけれどという患者さんもいるとは思います。なので、正確な数字では無いのですが・・・それにしても稀だそうです。
もっと多く患者さんがいるであろうと思われる事の一つに、原因遺伝子が見つかっていないという事があります。
なので、この診断は見た目と症状で決められるのです。だから、誰しもが『絶対にコフィンです』とは言えない段階。
という事で、いっちも『絶対にコフィンです』とは言えません。
ただ、聞かれたら『コフィンだと言われています』という回答ができるまでになりました。
コフィンの大きな特徴。
これもデランゲと同じ、どんな病気でも同じですが、症状に個人差は大きくありますが、診断する上で大きなポイントとなる事があります。
●手足の小指が短いく爪が小さい
●眉毛がアーチ型で濃い
●鼻の下が長く下唇が厚い
●まつ毛が長い
●乳児期は呼吸器感染症を多く起こす
●緑内障
●多毛
●低体重・低身長
その他心臓疾患、口蓋裂、内臓異常、摂食障害など、個人差はありますがでてくる場合があるそうです。
デランゲちゃんの症状と似ているのですが。
コフィンは特に小指の特徴があるのと、緑内障、呼吸器で判断されるようです。非常に大きな違いというか。
先生としては間違いが殆どなさそうなのですが、申し訳ないけれど遺伝子が見つかって無いので『絶対』とは言えないそうです。けれど、これだけの特徴があるとそう判断するしか無いようです。決定的というか。
ただ、ここ最近は遺伝子の研究もどんどん進んでいて。原因遺伝子が次々の見つかってきているのだそうです。なので、コフィンに関しても絶対にとは言えないけれど、4~5年で研究が進むのでは?って想像できるそうです。
いっちを診察している時の先生とは違い、症候群の事をあれこれ詳しく話す先生はとても話しやすく、私たちにわかりやすく説明してくれました。
『私たちは仕事だからなのだけれど、顔の事をあれこれ言ってすみませんね~』と何度も言ってました(笑)
けど、見る人が見ればわかるものなのですね。
まさか違う症候群の名前がここであっさりでてきて・・・なんて思いませんでした。いつもいつも不思議ちゃんで通ってたいっちが・・・コフィンだったんだ・・・
看護師さんもとても気を使ってくれて。
やはり病名にショックを受けたりする方も多い外来でしょうからね、すごく細かく気にしてくれました。
が、私たちは『K先生ってすごい先生だね~今まで誰もわからなかったのに~やっぱり遺伝子のプロなんだよね~』って、パパとその事ばかりに感動してました(汗)
で、『100万人に一人かぁ~そりゃぁ~そうだよねぇ~こんな可愛い子100万人に一人ぐらいしかいないもんねぇ~そりゃぁ~貴重な子だわ~可愛いはずよ~』
・・・なんて、お馬鹿な親してました(汗)
真面目な話に戻りまして。
なにより、私たち夫婦がこんなの~天気に話せるのは・・・
コフィンが『進行性では無い』という事がはっきりしているからです。
さて、これからも年に1度K大で先生に診てもらう事となりました。今回きりでそのまま・・・というのもなんなので・・・一度診たのだし、いずれ間隔はもっと離してもいいけれど、とりあえず年に1度診ましょうと。
そして、そこで新たにコフィンについてわかった情報や、色々な相談に乗ってくださるそうです。
生まれて7年1ヶ月。
いっちに○○症候群であろうという診断がでました。
数少ない症候群なので、知らない先生もきっと多いかと思います。
K病院には先生が直接今回の結果を知らせてくださるとの事。いつも通う大学病院にも書類を渡せるように準備してくれました。
さて、詳しく調べようと思ったのですが・・・
web上ではデータがかなりすくない・・・先生も日本語では文献が無いとの事、ほんとまだ全然研究が進んで無いのだと思われます。
そうそう、デランゲちゃんもそうですが、コフィンもかなり慎重派な性格であるそうです。いっちが地面の色が変わると歩き出せなかったり、足でつついて確認してから歩き出したりしてた事・・・たった1枚の座布団の上から下に降りるのに寝そべって足からじゃないと降りれなかった事・・・おもちゃに対してもすぐ飛びつかず、ごはんに対しても何に対しても過敏に反応してたこと・・・この症候群が持つ特徴だったのかもしれません。
洋服の着脱も聞かれました。どのぐらいでできるようになったか。
現在で脱ぐはできるけれど、着るのがボタンが留められないと話すと、丁度コフィンちゃんの特徴にあてはまるそうです。
個人差はあるのですが、多くのコフィンちゃんは着脱が7歳頃できるようになるというデータがあるそうです。
人間の体って不思議ですね~
誰しも、正常と言われる人間でも変わっている遺伝子なんてたくさんあるのに、それの組み合わせがたまたま病気を発症させてしまう。しかも、どこかで同じような組み合わせがあって、症候群となる。
どれも悪いものでは無いのに、時々組み合わせによって悪さをしてしまうんですよね。
健康でいられるのを改めて奇跡でありがたく思います。
そして、いっちの遺伝子の組み合わせはかなり変わっていたのかもしれないけれど、けれど、相変わらず私たちにとっては最高の子供だと思います。
ハンデを抱えた子を育てていて大変だろう・・・って思われる事が殆どですが。いえいえ、3~4歳までのあの頃を思えば、今の私たちの子育てはかなり楽です。
カニューレもまだ入ってるし、あちこち病気はありますが。それでも、私たちにとってはもう病を克服したかような合格ラインなんです。勿論油断しているつもりはありませんが。
症例は少ないしだけれど、これから生まれてくるコフィンちゃん達が、こんなに元気な子がいるんだ~って励みに思ってくれたらうれしいなって思います。また、そう思われるぐらい、楽しく子育てしていけたらいいなって思います。
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